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5 リア充
ネットゲームを始めて二年が経過したが、正樹は器用にネットと現実世界を区別していて充実した毎日を送っている。
最近は同じクラスの女子から告白され付き合うことになり所謂『リア充』だ。それでも毎日『KR』に接続してゲームを楽しんでいる。
ギルドのメンバーはあれから入れ代わり立ち代わりで今は三十人ほどの大所帯になってきた。正樹は早くも古参と呼ばれる側になってきており、プレイスキルの高さやキャラクターの設定のためか人気が高かった。
意識しているつもりはないが女と勘違いされているらしく、男キャラから親切に扱われアイテムをもらうことや美味い狩りに誘ってもらうことも多かった。
今残っている初期ギルドメンバーは七人だ。ギルドマスターのKAZUは勿論のことミストと☆乙女☆もまだ残っている。さらにはミストと個人的な話もするようになっており、ネットでの友人とも言える存在になっていた。☆乙女☆もチャットや操作が上達していて、一緒にパーティを組むと素早く徹底した回復により安心して狩りができるようになっている。今がネットゲームの一番楽しい時かもしれない。
狩りの合間にミストと雑談をする。
月姫:そろそろ受験なんだよね
ミスト:心配?
月姫:ううん。ちゃんと行けるとこにいくつもり
ミスト:そか
ミスト:俺は転職考えてる
月姫:へーなにすんの?
ミスト:キコリw
月姫:なにそれw
ミスト:まああれだよ。好きな仕事しないとお金あっても辛いぞってこと
月姫:大人って大変だなw
ミスト:子供は子供で大変だけどなw
正樹はミストを兄のように感じていた。双子の姉達は過干渉でしつこく納得をしない人種だった。それに比べるとミストはちゃんと聞きたい答えをくれ、追及をしてこない。しかも知識も話題も豊富で、ネットで検索を掛けるよりもまずミストに聞こうと思うのだった。
月姫:さて何か狩りしに行くか
☆乙女☆:うん今日は一日できる^^
ミスト:俺はそろそろ落ちるよ
月姫:えー
☆乙女☆:;;
ミスト:ごめw午後からくるからwノ
ミストはログインしたばかりなのに、話もそこそこにいきなりログアウトした。
☆乙女☆:忙しいのかな
月姫:いあwあれだよあれwレイアさんw
☆乙女☆:?
道具屋の前で新しくギルドに入ったヒーラーのレイアがうろうろしている。レイアは黒猫タイプで、薄紫のローブをまとい孔雀の羽が散りばめられたような扇を持っている。ヒーラーと言うよりもダンサーのようだ。
レイアが近づいてきて話しかけてきた。
レイア:こん^^
月姫:こんです
☆乙女☆:こん^^
レイア:ミストさん落ちちゃった?
月姫:うん最近リア充みたいですよ
レイア:えーそうなのぉー
月姫:忙しくてあんまりインできないってさっき言って落ちました
レイア:あーあそうなんだーじゃ野良でもいってこよ
レイアは月姫と☆乙女☆には用がない様で、さっさとメンバー募集をしている野良パーティに入っていった。
月姫:ミストはレイアから逃げてるんだよw
☆乙女☆:ああそうなんだー
ミストは狂戦士で前衛職だ。敵との戦いにおいては先頭を切って斬り込んでいく。課金によって装備が整っているせいもあるがプレイヤースキルが高く、獣人国家の中でなかなか目立った存在になっていた。
月姫も高いプレイヤースキルと容貌のおかげで一目置かれる存在である。『○○姫』という名前のキャラクターが何名かいるが通称『姫』と呼ばれるのは月姫のことだ。ただし中の人が男だと知らないものも多い。
つまりこの二人は『アンダーフロンティア』の二枚看板ともいえる。またこのギルドは解体するグループも多い中、メンバーの入れ替わりはあるものの、最古の大手ギルドでもあるので入団希望者が一定数いる。そのうちヒーラーの女の大半はミストと狩りなり、対人戦なりのパーティを組んでいくと終了したころには彼にべったりになる。ミストは単にゲームの都合上ヒーラーを守りながら戦っているだけなのだが、どうやらその行動は他の戦士たちと違い女性に勘違いを促す様だ。
☆乙女☆:ミストさんてもてるねえ
月姫:ps高いってのもあるけどさ
☆乙女☆:んープリに優しいよね
月姫:そりゃそうだよプリ死んだら終わりじゃんw
☆乙女☆:まあねえw
月姫:ミストは前衛だけど脳筋じゃないとこがいいよなw
☆乙女☆もレイアの気持ちがわからないでもなかった。ミストは好戦的であるのに冷静で落ち着いていた。ゲーム内のことも勿論よく知っているが月姫との雑談でもミストは博識さを嫌みなく感じさせる。☆乙女☆と月姫にとって兄のような存在で、憧れるのは当たり前の大人の男性なのだ。
レイアよりも☆乙女☆のほうが圧倒的にミストと親しいが、☆乙女☆にはミストを宇宙の果ての星のような存在だと感じていた。
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