厄日

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 男子部のみのミーティングはしょっちゅうだが、合同とは珍しい。大会も終わったばかりで、奈々子はなおさら疑問に思った。 「それって本当にこっちもなの」 「アリの気持ちは分かるけどそうみたい。清花さんが監督から直接言われたって」  真が出した回答に、奈々子の疑問はますます強くなる。ついでに名前を出されても一瞬誰か分からず、見上げたまま固まってしまった。 「キヨカさん?」 「さっき名前で呼んでくれって言われて」 「うーわぁ」  遥のほうが反応が早い。スポーツカーでも通り過ぎたような音が口から飛び出していた。  真が名前で呼んでいるのは別に構わない。奈々子が気に障ったのは、連絡の順番だった。  女子部と男子部と分けてはいるものの、監督兼顧問は同じだ。女子部の方が人数が少なく、男子に注力しているのも事実。  ただその監督が清花にだけ連絡したのも、真に直接連絡しなかったのも、奈々子は異様に思えた。 「ってかなんで」 「勝手に決めたんだろ。思いつきで始めるとこあるから」 「まあ全然有り得るん、だけど。それ、体育館でやるの?」  奈々子が聞きたかったのはそこではなかったが、敢えて言い直さずに話を進めた。昼休みなら別の部活が練習で使う可能性がある。 「まずおれがいったんアリを迎えに行くから」 「あーっと、それは来なくて大丈夫なんだけど」  真の申し出を丁重にお断りした奈々子。その様子に遥は可笑しそうにぷるぷる肩を震わせた。 「体育館。今日どこも使わないらしい」 「わかった。こっちにも伝えておきます」  とりあえず真が連絡に来てくれて助かった。奈々子は話を切り上げて、教室に向かおうとした。廊下中心で突っ立ったままの真を避けるようにして、周りも追い越して行く。その人波に奈々子たちも乗ろうとした時だった。 「マコト、こんなとこでなにやってんの?」  真の背後から現れ、仲良さげに肩を組んだ。組んだと言っても、若干の身長差はある。二の腕あたりをがっつり掴んでいた。  奈々子たちから見える画角だったはずだが、近づくまで何も分からなかった。がやがや溢れる廊下の喧騒に紛れていたのかもしれない。  と同時に奈々子は、さっきの寒気の正体を確信した。溶けた氷が背中に伝っていくように冷たさと生ぬるさが混ざった、そんな感覚に襲われる。  奈々子と遥を一瞥したその人は何も言わず、すぐに真へ視線を注いだ。 「清花さんこそ」 「ほらもう、さっき呼び捨てでいいって言ったばっかりじゃん」  肩を組んだまま、真を叩いて軽快に笑う清花。いよいよ大所帯になってきた。完全に通行の妨げになっている。
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