1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなところ、かな」
どう答えるのが正解か分からずに奈々子は曖昧に濁す。清花がもうひとこと聞こうとしてきたのが分かった。奈々子がぐるぐる考えていると、ぐっと遥が間を割って遮る。
「あれ。もしかしてマネージャーの方ですか」
今気づいた、と言わんばかりに目を見開く。なかなかに白々しい。まさか自分に聞いてきたのかと清花は一瞬たじろいた。
「は、はい。マネージャーの幹ですけど、何ですか?」
「いえ、特には。この部活って女子部の方が人数少ないんですよね? うちんとこの奈々子もよろしくお願いしますね」
「はあ」
保護者のような挨拶でにこりと口角を上げてみせる。清花の顔はますます怪訝そうな色に変わった。眉をますますひそめつつ、会釈程度に頭を下げる。
「ハル、あのその」
若干引いたような奈々子の声音に遥はケラケラと笑った。
「深い意味無いんだから、そんな気にしなくていいのに」
「あ、うん。それは分かってるんだけど」
「じゃあ何」
釈然としない友人に違和感を抱きながら、遥が後ろを振り返る。
いつの間にか奈々子の横に真が立っていた。気まずそうに引きつった笑顔の彼女が不憫に見える。
「は? 神業?」
遥の咄嗟に出た感想だった。大きな音も気配も立てずに移動をしていたこの男にもはや感服せざるを得ない。
最初のコメントを投稿しよう!