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大きな足音を廊下に響かせて、奈々子と遥は階段を駆け上がった。
「どっと疲れた」
「右に同じく」
自分の教室に戻ってきたと同時にとんでもない疲労感。身体的にそして何故か精神的にも負担が大きい。
「奈々子。あの幹っていうマネージャーさんに何か言われたりしてない?」
息切れをなんとか整えた遥に聞かれ、奈々子は密かにギクリとした。
「特に何もないけど。どうかした?」
「……ううん、別に。言われてなきゃいいんだけど」
ふぅと一息ついてから、遥は自分の席に座る。普段は帰る時ぐらいにしか利点がないが、今は入口に近い席で良かったと心から安堵した。
一方で、奈々子は内心ヒヤヒヤしていた。もしかして、遥にはお見通しだったりするのだろうか。
「気になるとこでもあった?」
「まあ、気になるって言えば気になるな」
歯切れが悪い。自分で聞いておいてなんだが、ますます暑さとは違う汗が混ざる。
そんな彼女の心中を察したのかどうかは分からないが、遥は困り気味に眉を下げた。
「部室行く前に聞いてた話だと、さっきのマネージャーさんは仕事してるって言ってたよね」
またもや唐突に切り出した友人に、奈々子は黙って首を縦に振る。
「その仕事って、あたしらが今見てきた状況のこと?」
「え、うん。そうだけど」
「嘘でしょ」
きょとんとした顔で答える奈々子に、遥は思わず固まった。どうやら彼女は本気でそう見えているらしい。
「奈々子、部員のケアっていうのにも限度があるんだよ」
「ん?」
どういう意味なのか聞こうとした時、担任が教室に入ってくる。タイミング悪く、奈々子はそのまま席に戻る羽目になってしまった。
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