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一方、F組に寄った奈々子は入口で女子部のキャプテン 葉村 ひまりを呼んだ。
「ひまちゃん」
「あれま。どうしたの、奈々子ちゃん」
てててっ、と効果音でも付きそうな走り方でポンパドールヘアの女子生徒が寄ってきた。
二年生の部員は彼女ひとりのため、自動的にキャプテンになった経緯がある。当の本人は実力的に考え、一年生の誰かに譲るつもりだったようだが、奈々子はひまり以外に考えられなかった。
「なんかね。昼休みのミーティングあるんだけど、男子も女子も一緒にやるんだって」
「うえぇっ? なんかおかしくない?」
ひまりのくりっとした丸い目がますます丸くなる。
「やっぱりそう思う?」
「まあでも、監督が言うならそうなんだろうね……」
ひまりは釈然としないようだったが、どうにか納得しようとしていた。それは奈々子も同じ気持ちで、どうにか気持ちを消化しようと話を続ける。
「昼練でどこも使わないから、体育館でやるっぽいんだけど」
「ほええ、そうなんだ」
それもまた珍しいね、と呟きながらひまりの口から苦笑いが溢れ出た。
「一年生には私から伝えておくね」
「えっ。いやいや、わたしが行くから大丈夫だよ」
ひまりの申し出に奈々子は驚いて断ろうとする。普段の連絡なら奈々子が一年生の教室に行き、まとめて話しているからだ。
「真くんとなんか連携取ったりするんじゃないの? こういう変なこと起きた時って」
確かにひまりの言う通りだった。ぽやぽやとした雰囲気の彼女だが、やはりキャプテンなだけあって、全体把握はお手の物。奈々子も見習わなければと痛感した。
「実はその、北川くんからさっき聞いたばっかりで」
「そっかそっか。真くん経由だったか。ううん、やっぱり変だな……」
正確に言えば、『清香発』真経由になるが言うことでもないと思い、奈々子は伝えなかった。
目の前のひまりは顎に手を当てて、本格的に悩み始める。しかし、すぐに顔をぱっとあげて「お言葉に甘えて、奈々子ちゃんにお願いしちゃって良いかな?」と明るく持ちかけた。
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