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「うっわ、奈々子どしたの」
一番前の席に座っていた三野宮 遥は、ぼんやりとついた頬杖を解いた。今しがた滑り込む勢いで教室に入ってきた友人に驚いて目を僅かに丸くする。
奈々子はゲホゲホと咳き込みながら、なんとか呼吸を整えようと両膝に手を添えていた。
「いいんや、そのっ、あんの」
口を開けば支離滅裂。未だに咳き込む彼女をみて頬杖をつき直した遥は、小さく溜め息をついた。
「あーあ。とうとうこの暑さでやられちゃったか」
「失礼すぎやしませんか」
「分かった分かった。ますます暑くなるから、言いたいことあるなら早く荷物置いてきて」
もう一言くらい言ってやろうかとも思ったが、遥に半ば呆れ顔で追い払われてしまった。奈々子は仕方なく、しぶしぶ教室の後ろにあるロッカーに向かう。
「あぁつぅいぃぃ」
自分の背負っていたリュックサックから、制汗シートを取り出し、ロッカーにぐいぐい押し込んだ。脱力しながらふらついた足取りで遥の机へと戻る。背中にぺったりと制服がくっついて、暑苦しく感じた。
今日は朝から気温が高い。そんな中走ってきた奈々子の頬は、風呂上がりのように真っ赤になっていた。
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