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「ほら、やっぱりだ。ね、僕の言った通りでしょ」
得意満面で兄を見上げる弟君は、お尻を横に動かしてカー子ににじり寄り、今日もかわいいねと背中をなでてくる。
「でも、カー子が来る前に何回間違えたんだ?」
兄の指摘に、弟君は顔をくしゃっとしかめて抗議した。
「兄ちゃんだって、わかんなかったじゃん」
「いいや、兄ちゃんはわかったぞ。空を飛んでた時からな」
「えー、嘘だぁ」
「ほんとだ。友達だからな」
衛藤兄は、あごを上げて威張ってみせた。
なんて兄だ。
僕だって仲良しだと一生懸命言い返す弟君に、綾乃は当然のこととして横並びでカーカー抗議しておいた。
「ほら。カー子も僕と仲良しだって言ってるでしょ」
綾乃の気持ちが伝わったのか、衛藤兄は裏切り者とでも言いたげな不服の表情を向けてきた。
今度は、弟君がふふんと胸を張って、カー子のくちばし下の辺りをちょいちょいなでる。
こういうのを、猫かわいがりと言うのではないかと綾乃は思った。そして、カラスになっているのに、猫の気分というのはいかがなものかと考えてしまう。
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