牛乳

6/13

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「ほら、やっぱりだ。ね、僕の言った通りでしょ」  得意満面で兄を見上げる弟君は、お尻を横に動かしてカー子ににじり寄り、今日もかわいいねと背中をなでてくる。 「でも、カー子が来る前に何回間違えたんだ?」  兄の指摘に、弟君は顔をくしゃっとしかめて抗議した。 「兄ちゃんだって、わかんなかったじゃん」 「いいや、兄ちゃんはわかったぞ。空を飛んでた時からな」 「えー、嘘だぁ」 「ほんとだ。友達だからな」  衛藤兄は、あごを上げて威張ってみせた。  なんて兄だ。  僕だって仲良しだと一生懸命言い返す弟君に、綾乃は当然のこととして横並びでカーカー抗議しておいた。 「ほら。カー子も僕と仲良しだって言ってるでしょ」  綾乃の気持ちが伝わったのか、衛藤兄は裏切り者とでも言いたげな不服の表情を向けてきた。  今度は、弟君がふふんと胸を張って、カー子のくちばし下の辺りをちょいちょいなでる。  こういうのを、猫かわいがりと言うのではないかと綾乃は思った。そして、カラスになっているのに、猫の気分というのはいかがなものかと考えてしまう。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加