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立ち上がった翼君は、ちらちら振り返りながら走っていくので、見守る綾乃は転ばないかハラハラしてしまう。
一体、カー子はどれだけ食いしん坊だと思われているのだろうか。
普通のカラスなら人の気配がなくなった瞬間に咥えて飛び去るだろうけど、綾乃カラスはそこらの野性と違うので、お願いされたら行儀よく待っている。
それにしても、衛藤祐は学校だと一人っ子の印象だったのに、こうしてみれば大人げないところはあれど、立派なお兄ちゃんをしていた。
身ぎれいにしていても、カー子は野鳥だ。あれだけなで回した手でおやつを食べるのは保護者として心配するのは当然だ。
それに、意外と言葉選びが上手だった。
物珍しい懐くカラスだからって、とっておきが付くおやつを丸ごとあげちゃうのは太っ腹すぎる。
兄としては、弟の取り分を確保しておきたかったのだろう。ついでに、半分くらいは本当にカー子の心配をしてくれた気がする。
うん、しょうがない。
弟君から目を離した兄がハンドルに体を預けてこちらを見てくるので、「少しだけなら、なでさせてあげないこともないけど」という意味を込めて首を斜めに見返した。
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