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「ありがとな」
「クワ?」
残念ながら、綾乃の気持ちは通じてなかった。
何が言いたい、言ってみろ。
「翼のやつ、学校でケンカしたらしくて、ちょっと元気なかったんだよ。でも、カー子のおかげで元気になった。だから」
なんだ、いいお兄ちゃんだ。
実は、こっそり、お兄ちゃんに憧れたことのある綾乃は、ベンチから衛藤兄の肩に移動した。
わかったよ、カー子は衛藤兄弟の友達だって認めてあげよう。そんな気分で。
「あっ、兄ちゃん、ずるい。カー子とイチャイチャしてる」
戻ってきた翼君は、なかなかの表現で兄を羨んだ。
それは違うだろうと思う綾乃が、どんな返事をしてくれるのかと肩の上で見守っていたら、衛藤兄はさらりと肯定してしまった。
「少しくらいいいだろ」
認めるんかーい! と、ツッコミたかった綾乃だけど、多少は兄の威厳というものに協力してみようと思ったばかりなので肩から下りないでおいた。
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