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「カー子。あとは、アリンコにやっていいか」
アリンコですか、まあいいけど。
構わなかったので、綾乃は「カア」と返事した。
「カー子、美味しかった?」
同じく食べ終わった翼君が聞いてくるので、こちらにはすっごくの意味を込めて「カー」と返しておいた。
「兄ちゃん、カー子、かわいいね」
「だな」
衛藤兄弟は、すっかりカラスの綾乃にメロメロだった。
これが世間で言うモテ期なのかと調子に乗っていたら、綾乃はリビングでテレビを観ていた。
「あれ、何してたんだっけ」
ついさっきまでの記憶がなくて戸惑っていると、目の前に牛乳を出された。
「何これ」
持ってきたのは母親だ。
「何って、あんたが突然、牛乳飲みたいって言ったんでしょう」
「そうだったかも?」
言われてみたら、確かに頼んだ覚えがあった。
「いらないなら、もらうけど」
「飲む、飲む!」
慌てて受け取ると、母親は怪しみながらソファーに座った。
綾乃は肩をすくめて牛乳に口をつける。
冷たい牛乳はお腹にきそうだったから、口の中で少しぬるくしてから喉に流し込んだ。
たまの牛乳は美味しかった。
だけど、どうして牛乳の気分になったのかは思い出せなかった。
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