宝箱

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 天気は曇り。  白じゃなくて灰色の方だ。  後部座席に乗り込んだら出発進行、れっつごー。 「あれ、岩見沢じゃないの?」 「天気悪いし、地元で充分」  本屋で立ち読みしたり、ゲーセンで好きなキャラのグッズチェックをしたかった綾乃はかなりのがっかりだった。  面白くなさに身を任せてずるずるとだらしなく腰かけると、ラジオの知らない洋楽をBGMに遠くに見える雲の絨毯を眺める。  まだ降らないけど、その内確実に降る。そんな空模様の中を一羽の鳥が飛んでいった。  こういう日は飛びづらいんだろうなぁ。  なんてことを考えていたせいか、綾乃はカラスになっていた。
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