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牛乳
「あ、悪い」
学校の玄関でぶつかられた綾乃が謝られてもぼうっと見送っていたら、柿原文代に腕を引っ張られた。
文代とは去年同じクラスで親しくなって、通学路がかぶる関係でクラスが別れた二年になっても一緒に登校する仲だ。
「また夜更し?」
「昨日は早めに寝たよ」
とは答えながらも、綾乃はどことなく上の空だった。
「靴、履き替えないなら先行くけど」
文代にせっつかれて、綾乃は急いで下駄箱から上靴を取り出した。
「ねえ、綾乃。さっきのって、衛藤だよね」
「うん、たぶん」
「たぶんって、綾乃は今年も同じクラスでしょ」
「ついでに言うなら、今年は同じ班だけど、あんま話さないし関係ないよ」
「ふうん」
それ以上、文代は話を広げなかったけど、関係ないと言い切った綾乃の中に引っかかる何かがあった。
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