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ここは小学校の校庭です。でもまだ夏休み中なので、生徒は誰もいません。そこへ一羽のツバメがやってきました。
「ひまわりさん、こんにちは」
ツバメは小学校の花壇に咲いている、大きなひまわりに会いに来たようです。
「あらこんにちは、ツバメくん。今日も元気そうね」
「うん、僕は元気だよ。でもひまわりさんは少し変だよ」
「え、変って何が?」
ひまわりはびっくりして尋ねました。
「だって今日はずっと下を向いているもの。花も何だか元気がなくなってきてるみたいだし、どこか病気なの?」
ここ二、三日、ひまわりがずっと下を向いているので、ツバメは心配なのです。
「ううん、違うのよ。そろそろ夏も終わりでしょ。私は暑い夏は好きなんだけど、涼しい秋は苦手なの。だから来年の夏のために、準備をしていたの。でもごめんなさいね、心配させちゃって」
ひまわりはそう言うと、久しぶりに顔を上げて、にっこりとしてくれました。それを見て、ツバメはやっと安心したようです。
「あー良かった。それじゃまた来年も会えるんだね」
ツバメはひまわりが大好きなのです。
「もちろんよ。これからだんだん涼しくなっていくから、私は種になって眠るの。あなたは南の島へ行くんでしょ?」
「うん、僕も涼しいのは苦手なんだ。だからこれから仲間と一緒に、遠い南の国へ行くんだよ」
ツバメは渡り鳥なので、秋になると暖かい南の国を目指して旅に出かけます。実は今日が出発の日なので、ツバメはお別れを言いに来たのです。
しばらく話をしていると、ツバメの仲間が呼びに来ました。
「あ、みんながやって来た。それじゃそろそろ行ってきます。また来年会おうね。ひまわりさん、元気でね」
ツバメはそう言うと、仲間と一緒に飛び立って行きました。
「あなたこそ長い旅になるんだから、気をつけてね。お互いに来年また元気で会いましょうね。行ってらっしゃーい」
そう言うとひまわりはまた下を向いて、来年の夏まで眠る準備を始めました。
夏ももう終わりです。これから涼しい秋がやってきて、虫たちの合唱が始まるのでしょう。子守歌代わりに聞きながら、ひまわりはツバメとの思い出を夢に見るのかもしれません。もしかしたら、ツバメも遠い国でひまわりの夢を見るのかもしれませんね。
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