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「さっき、大河に取り上げられたのが、本命。今、持っている誕生日プレゼントは、かなり見かけが悪いけど。」 そういって、瞬が、自分の後ろから取り出したのは、たくさんの赤いワレモコウのドライフラワーが、白い薄い紙で包まれ無造作に、黒いゴムひもで止められた花束。 瞬は、花鈴に渡す花束を見て、自分が選んだ赤いリボンがなくて、がっかりした。 (せっかく、花鈴の好きな赤色でまとめたのに。) でも、瞬にとって、黒いゴムひもには、思い出がある。 小さい頃、花鈴は、髪をまとめるのに、いつも黒いゴムひもを使っていた。 その黒いゴムひもで、まとめた髪が揺れる花鈴の後ろ姿を、瞬は、ずっと見てきた。 大河にいじめられたとき。 三人で遊んでいるとき。 二人で一緒に絵本を読んでいるとき。 でも、その姿も見られなくなる。 瞬は、中学に入ったころから、花鈴を想っていた。 (花鈴の後ろ姿を見るのではなく、これからは花鈴の一歩前にいたい。) (今は、こんな気弱い僕だけど、受け入れてくれるならば、花鈴を守って、いきたい。) (そして、今、教室に二人だけしかいない。誰も僕を冷やかさない。今、少しだけ花鈴との距離を縮めたい。)
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