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「あ、あの…このお婆ちゃん、埒が明かなくて…」
疲労困憊、といった表情の康恵に変わって、もう一人の医療事務員が老女の対応に出た。
「当院での診察は初めてですか?」
「そうよ」
「どんなことが、ご心配ですか?」
「眠れないのよ。昨日も一昨日も、眠ってないの。もう3日間、一睡もしてないわ」
「保険証をご提示願えますか。では、内科をご案内いたします。それと、こちらに気になることを全てお書きください。その間に、診察券をお作りしますね」
「おやまぁ。親切に、ありがとう。あなた、お名前は?」
康恵に助け船を出した医療事務員は、胸元のネームプレートを老女に分かりやすく提示しながら、名乗りを上げた。
「天崎倫音と申します」
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