1.倫音、変装する。

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「あ、あの…このお婆ちゃん、埒が明かなくて…」 疲労困憊、といった表情の康恵に変わって、もう一人の医療事務員が老女の対応に出た。 「当院での診察は初めてですか?」 「そうよ」 「どんなことが、ご心配ですか?」 「眠れないのよ。昨日も一昨日も、眠ってないの。もう3日間、一睡もしてないわ」 「保険証をご提示願えますか。では、内科をご案内いたします。それと、こちらに気になることを全てお書きください。その間に、診察券をお作りしますね」 「おやまぁ。親切に、ありがとう。あなた、お名前は?」 康恵に助け船を出した医療事務員は、胸元のネームプレートを老女に分かりやすく提示しながら、名乗りを上げた。 「天崎倫音(あまさき りんね)と申します」
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