初恋未満

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2年3組 37番 矢野海斗(やのかいと) 38番 吉池理緒(よしいけりお)  クラス発表の張り出しを見た私は、密かに心の中で万歳三唱をしていた。一緒のクラスっていうだけで舞い上がりそうなのに、二つ並んだ名前にドキドキが半端なくて、心臓が壊れちゃうかと思った。  矢野くんと同じクラス、出席番号は前後。こんな奇跡って嬉しすぎる。  矢野くんの存在を認識したのは、1年生の秋。サッカー部の矢野くんは、地区大会の優秀選手に選ばれ、表彰の為、朝会の壇上に呼ばれた。  体育館の舞台に飄々と現れた矢野くんは、背が高くて遠目にも格好いいと思った。賞状を受け取る時には、賞金を受け取るお相撲さんのようにサッサッと手刀を切り、良く通る声で「ごっつぁんです!」なんて言ったものだから、体育館は爆笑に包まれた。 「コラッ」と軽く小突こうとした学年主任の体育教師、大塚先生の攻撃をヒラリとかわし、舞台から飛び降りた姿を見て、心を持って行かれた。  壇上の遠い人だった矢野くんが同じクラス、並んだ出席番号。教室までスキップでもしちゃいそう。気持ちはどこまでも弾んで行きそうだった。
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