初恋未満

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 四月も後半に入ったある日のお昼休み。トイレから戻った私が見た光景。そこだけまるでスポットライトが当たったかのようだった。本当にグランドに面した窓からの光でそう見えたのか、それとも衝撃を受けたく私の目の錯覚だったのか。とにかくその二人の部分だけが透明の膜の向こう側のように、遠く感じられた。  私の席に逆向きに座る矢野くん。矢野くんは私が見たことの無い表情をしていた。嬉しさの中に少し緊張感、でも楽しくて仕方ない、そんな高揚した表情。  矢野くんの視線の先は、私の後の席の渡辺さん。サラサラヘアのショートカットで化粧気のない渡辺さんは、バスケ部の次期部長とも言われていて、かなりのスポーツウーマン。ボーイッシュな長身美人でスタイルも良くて、どこか大人びていて。  矢野くんと渡辺さん、二人一緒にいるのがすごくしっくりきているように見えた。  ナンダ、ソウダッタンダ。  矢野くんが、後を向きたかった訳がようやく分かった。  ナンデキヅカナカッタノ。
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