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珍しく…可南子は勤務を休んだ…。
職場は少し忙しくなるだろうが、
サブリーダーが師長の代理をしてくれる筈だ。
可南子は1週間休んで全てをリセットしようと思った。
特にインターンの吉川 昇との関係である。
休み始めて二日目に昇は可南子のアパートを訪ねてきた。
可南子は居留守を決め込んだ。
《今は会わないほうがお互いの為だ…。》
毎日職場には連絡を入れていたので、
アパートで倒れているかも……
という心配はさせなかったと思う。
風邪という理由にしたが…体は元気で…。
しかし、吉川 昇に会うかもしれないと思うと
行きつけのスナックにも顔を出せなかった。
《仮病とは不自由なものだ》と…
可南子はしみじみ思った。
そこで、昇が通ってきているであろう…
4階病棟の第401詰所気付け吉川昇様宛に
手紙を書いた…。
他の者に悟られぬよう男名前の差出人名を使って。
『 拝啓
吉川 昇様
荒神可南子です。 カモフラージュで男名前の差出人にしてみました。
先日のドライブ…とても楽しかったわ。
私も10~20年前の気分で楽しめたしね…。
だって、昇さんが…私の事を素敵だとか彼女にしたいとか…お世辞を言ってくれるものだから…
すっかり私も若い娘の気分でドライブさせて貰ったわ…。
これは私の取り越し苦労だと思うんだけど、
万が一でも 私…可南子を彼女にしたいと
思ってはダメよ…。 まあ無いとは思うんだけどね…。
可南子はこんな歳になっても、咲かすべき華があるの。 でも、それは20代の昇君とじゃ無いと思うんだ。
世の中…歳の差婚とかあるけど…
私達は違うよね。
私の事ばかり描いたけど…
昇君こそ、医者としてスタートを切ったんだし、
私なんかにつまづいてちゃ…イケないでしょ。
まあ、なんか勘違いして可南子が書いてるわと思ってくれたら…それでも良いしね。
じゃあ、次に会った時は、インターンと師長という事でヨロシクね。
かしこ。 』
吉川 昇は手紙を読んで…目頭が熱くなった。
トイレに行って顔を洗ったが…泣けた。
少し落ち着いてから仕事に戻った。
昇は家に帰り、自分の部屋に入ると名案が浮かんだ。
《そうだ…俺も可南子さんに手紙を書こう!》
昇は心を込めて可南子に手紙を書いた。
『 拝啓
荒神可南子様
お加減は如何ですか?
とても心配しています。
先日のドライブ……私も本当に楽しかったです。
可南子さんが美人で一緒に歩いても誇らしい…
というのもあったし…
可南子さんは女の魅力が滲み出ていましたよ。
ミニスカートが似合う女性って
可南子さんの年代の人は他に思い当たらないです。
凄くチャーミングでしたよ。
可南子さんの彼氏になりたい……
って言ったのは、本当の事です。
でも競争相手が多いし…医者の間でも随分人気ですから、きっと僕なんか相手に成らないでしょうね。
これって……可南子さんに振られたのなら
諦めます…。
きっと僕は…青臭いお子ちゃま…なんだと思います。
可南子さんも素敵な彼氏と幸せになってください。
そのラブラブぶりを見たら…僕も諦めが付くと思います。
でも一夜でも僕に時間をいただけるなら…
可南子さんを僕の思い通りにしたいです。
きっと叶わぬ夢でしょうけどね。
吉川 昇
敬具 』
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