第2章 昇(のぼる)との再会

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珍しく…可南子は勤務を休んだ…。 職場は少し忙しくなるだろうが、 サブリーダーが師長の代理をしてくれる筈だ。 可南子は1週間休んで全てをリセットしようと思った。 特にインターンの吉川 昇との関係である。 休み始めて二日目に昇は可南子のアパートを訪ねてきた。 可南子は居留守を決め込んだ。 《今は会わないほうがお互いの為だ…。》 毎日職場には連絡を入れていたので、 アパートで倒れているかも…… という心配はさせなかったと思う。 風邪という理由にしたが…体は元気で…。 しかし、吉川 昇に会うかもしれないと思うと 行きつけのスナックにも顔を出せなかった。 《仮病とは不自由なものだ》と… 可南子はしみじみ思った。 そこで、昇が通ってきているであろう… 4階病棟の第401詰所気付け吉川昇様宛に 手紙を書いた…。  他の者に悟られぬよう男名前の差出人名を使って。 『 拝啓  吉川 昇様 荒神可南子です。 カモフラージュで男名前の差出人にしてみました。 先日のドライブ…とても楽しかったわ。 私も10~20年前の気分で楽しめたしね…。 だって、昇さんが…私の事を素敵だとか彼女にしたいとか…お世辞を言ってくれるものだから… すっかり私も若い娘の気分でドライブさせて貰ったわ…。 これは私の取り越し苦労だと思うんだけど、 万が一でも 私…可南子を彼女にしたいと 思ってはダメよ…。 まあ無いとは思うんだけどね…。 可南子はこんな歳になっても、咲かすべき華があるの。 でも、それは20代の昇君とじゃ無いと思うんだ。 世の中…歳の差婚とかあるけど… 私達は違うよね。 私の事ばかり描いたけど… 昇君こそ、医者としてスタートを切ったんだし、 私なんかにつまづいてちゃ…イケないでしょ。 まあ、なんか勘違いして可南子が書いてるわと思ってくれたら…それでも良いしね。 じゃあ、次に会った時は、インターンと師長という事でヨロシクね。 かしこ。 』 吉川 昇は手紙を読んで…目頭が熱くなった。 トイレに行って顔を洗ったが…泣けた。 少し落ち着いてから仕事に戻った。 昇は家に帰り、自分の部屋に入ると名案が浮かんだ。 《そうだ…俺も可南子さんに手紙を書こう!》 昇は心を込めて可南子に手紙を書いた。 『 拝啓  荒神可南子様 お加減は如何ですか? とても心配しています。 先日のドライブ……私も本当に楽しかったです。 可南子さんが美人で一緒に歩いても誇らしい… というのもあったし… 可南子さんは女の魅力が滲み出ていましたよ。 ミニスカートが似合う女性って 可南子さんの年代の人は他に思い当たらないです。 凄くチャーミングでしたよ。 可南子さんの彼氏になりたい…… って言ったのは、本当の事です。 でも競争相手が多いし…医者の間でも随分人気ですから、きっと僕なんか相手に成らないでしょうね。 これって……可南子さんに振られたのなら 諦めます…。 きっと僕は…青臭いお子ちゃま…なんだと思います。 可南子さんも素敵な彼氏と幸せになってください。 そのラブラブぶりを見たら…僕も諦めが付くと思います。 でも一夜でも僕に時間をいただけるなら… 可南子さんを僕の思い通りにしたいです。 きっと叶わぬ夢でしょうけどね。              吉川 昇                敬具 』
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