第3章 貴史と再び

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可南子は貴史と上手く交際していけるのか… 女として貴史と愛情を育んでいけるのか… 二人にとって『お試し』の期間が始まった。 大切なのは肌を寄せ会う瞬間だけでは無い事を 二人とも痛いほど学んでいる…。 何気ない会話の一言一言が… 愛を育んでいく事を知っている。 二人は関心を寄せあい…労りあった… 微かにシワがある お互いの顔にも愛着が湧く。 若い頃は『好きだ』という気持ちだけで… 気持ちをぶつけ合い… 体を寄せ合うだけで… 愛し合っている気分に成っていた。 歳を経る毎に愛の形も変わってくる… という事だろう。 貴史は可南子に『結婚しよう』とプロポーズをした…。 少し間があったが…可南子はオッケーをした。 結婚式は両家から親、親戚が顔を並べた。 ハネムーンはハワイ。 可南子は貴史に看護師の仕事を辞めて… 貴史の店を手伝っても良いか…?と聞いた。 「ああ…君も試しにパンを焼いてみると良い…。 楽しいから…。」 貴史はそう答えた。 実際…可南子が生地をこねて…パンを焼いてみたのだが… 出来上がったのは煎餅みたいなパンだった。 「ああ…こりゃあイースト菌を入れるの忘れてるね。」 そう貴史は言って微笑んだ。 それでは…と 可南子は、またパンを焼いてみたが…今度は 発酵し過ぎて傘の開いたキノコのようなパンに成った。 「新作だねえ…。」 貴史は少し意地悪な笑みを浮かべた。 几帳面な筈の可南子は益々パンを焼き… 失敗作を生み出した。 しかし、その途中に色んなヒントが有って 貴史の参考となり新作が生まれたりもした。 「カナちゃんのお陰だよ…。」 貴史の言葉は可南子の慰めや励みになり… やっと一人前にパンが焼けるようになった。 店番で貴史の姪子の柴崎愛子は… 可南子の事を『お姉さん』と慕って、 共に貴史のパン屋を盛り上げている。 …………………… おしまい ………………………
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