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貴史
「昨夜から泥酔するわ……
あんな状態で一人で帰ろうとするわ……
シャワー浴びながら寝てしまうわ……
そんな事を言うなら…勝手にすれば良いよ。
人の気も知らないで……
でも他人には迷惑かけるなよ…。
じゃあね……。」
可南子は部屋を出ていく貴史を無言で見送った。
掛ける言葉が見つからなかった。
可南子は貴史にかけた言葉を後悔していた。
《可南子……アンタ、貴史の事を待ってたんじゃ無いの?
それとも…海外に行ってしまった貴史の事を恨んでたの?
それとも、アラフォー女の僻(ひが)み?
素直には…成れないのよね…。》
その日も…可南子は日勤で看護師達に指示を出していた。
廊下を歩いていると…先日声をかけてきた…
医者の小林とすれ違った。
小林は可南子を呼び止めると…その夜の食事に誘ってきた。
「ああ……良いですよ。 じゃあ20時に銀座の その店で…。」
可南子は仕事が終わって一旦家に帰り…
支度をして銀座の『ラルク』というステーキハウスに向かった。
携帯をチェックすると小林から
「もう店に入ってるからね。」
とメッセージが入っていた。
店の中で小林と 落ち会うと…
飲み物と共にメインディッシュのステーキも注文した。
「すみません、遠慮が無くて…。」
小林
「いや、素直なところが荒神師長の良い処だよ。
さあ、サイドメニューも どう?」
「有り難うございます。 では…。」
可南子はそう言って海藻サラダやキムチなどを頼んだ。
小林
「いやあ…荒神さんも病棟を任されて大変だねえ。 若い看護師やらを まとめるのがさ…。」
可南子は『若い…』というフレーズに引っ掛かってしまった。
《どうせ…私は若く無いわよ!》
可南子は、それには答えず…食べるのに集中している素振りを見せた。
「ああ…勤務時間外にまで…仕事の話はタブーだよな。」
小林と可南子の話は…あまり盛り上がらなかった。
可南子から小林を評価するとしたら…
《無神経で 口ベタ!》
小林から可南子を評価すると、
《プライドの高いアラフォー女!》
って処だろうか…。
当然の如く、この店だけで次の店は無しである。
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