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貴史
「今まで証券マンとして仕事してきたけど…
会社の方針に段々疑問を感じて来てね…
独立して何か始めようと思って数年間 準備してきたんだ。
転勤の最後の任地はフランスでね、
仕事が夕方終わったら、パン職人の見習いさ。」
可南子
「そうなんだね……。
それで店は何処に出すの?」
「うん…原宿のほう…新しいメニューを考案中…。
来週の金曜日にオープンなんだ。」
可南子
「じゃあ忙しいわね…。」
以前の可南子なら…
《それは良いんだけど…私達の関係はどうするの…?》って聞いてしまうところだ。
「今日は帰ってオープンするパン屋の準備をしたほうが良いんじゃない……。」
可南子は努めて…優しい口調で貴史に言った。
「じゃあ……ゴメンね。 またね…。」
そう言って貴史は席を立って行った。
《また…一人になっちゃったな…。》
可南子は、また 行き付けのスナックを覗いた。
バーテンの友野
「いらっしゃいませ…。
あっ…可南子さん、久しぶりですね。」
「ああ…そうね…。」
友野には前園貴史にお持ち帰りされたのを知られているので、少しバツが悪い…。
しかし友野も客商売には慣れているので、
思っていても口には出さない…。
可南子は それを有り難く思っていた。
同じカウンターで20代のカップルが呑んでいたのだが…
ふと可南子にカップルの男性が話しかけてきた。
「あのう、失礼ですが…医療関係のお仕事をされている方では無いでしょうか…?」
可南子
「ああ……まあ、そうだけど…。」
バーテンの友野もこちらを向いていたので
そういう話をしていたのだろうと思った。
「実は妹がセクハラでOLを辞めて……
今度は医療関係に進みたいって言うもので…。」
可南子
「へえ…そうなんだ…。 それで…?」
可南子が初めて、そのカップルの女性のほうをしげしげと見ると、大人しそうな美人さんだ。
カップルの男性
「はい、バーテンダーの友野さんから、
『大病院の看護師の師長様がいらっしゃるよ』と聞いたもので……。」
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