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のどかたちのところに、
「貴弘ー」
と機嫌よく泰親がやってきた。
機嫌よすぎて不気味だな、とのどかが思っていると、
「貴弘、ちょっと来い」
と泰親は貴弘の肩を抱き、隅の方に連れていく。
だが、この神主、普段、あまりコソコソしない性格なので、コソコソ言っているつもりなのだろうが、まったく小声になっていなかった。
「お前、のどかが本当に自分を好きなのか、心配なのであろう。
今日、風子がいいこと言っておったぞ。
のどかがお前を好きか嫌いか、花占いでもしてみたらどうだ」
なにも内緒になってはいない泰親の話を聞きながら、花占いの話なら、さっき社長にしましたよ、とのどかは思っていたのだが。
そういえば、雑草で花占い、のところからしか喋ってないので、どの花だったら奇数だから、何処で終わる、という話はしていなかったなと気がついた。
「そうか、やるか。
ちょっと待て」
と言った泰親が、
「これじゃ、これじゃ」
と持ってきたのはコスモスだった。
寮に飾ってある花瓶から抜いてきたらしい。
前の大家さんがたくさん咲いたからとくれた夏咲きのコスモスだ。
うっ。
コスモスは偶数だから、好きで始めたら、絶対、嫌いで終わるのに。
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