1165人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「のどか、ちょっと目をつむって来てみろ」
八神も火の方に行ってしまったあと、貴弘がすっと何処かに消えたと思ったら、そう言ってきた。
「また花占いですか……?」
と目を閉じて花を摘め、と言われたのを思い出し、のどかは言ったのだが。
「違う。
いいから、目をつぶれ。
早く」
と急かされ、言われた通りにする。
貴弘に手を引かれ、ちょっと歩いた。
この感じは、店の庭先の方かな~、と思っていると、
「静かに、しゃがめ。
そして、素早く目を開けろ」
と指示される。
な、なんなのですか……、
と思いながらも、言われた通りに、貴弘に右手を握られたまま、しゃがみ。
そっと目を開けて見ると、草むらに黄色い光が点滅していた。
その淡い光は白いホタルブクロの花の中にあった。
釣鐘型のホタルブクロの花の中にホタルが入っているのだ。
小さなホタルの光は、花の中にあるせいで、更にぼんやりと柔らかな光となって、闇に広がっている。
「……綺麗ですね」
そのまましばらく二人で黙って、ホタルが光るのを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!