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「あ、写真、撮っときましょうか」
とのどかがスマホを出したが、
「お前、また容量いっぱいなんだろ」
と言って、貴弘が自分のを出してきた。
ところが、
「……俺もいっぱいなようだ」
と貴弘は呟く。
少し消そうと写真を開けてみたようだ。
すると、あの、バーで二人、頭を少し寄せ合って写っている写真がパッと出て来た。
どうやら直前まで、のどかのスマホから転送してあったその写真を開いて眺めていたらしい。
貴弘が少し赤くなった。
「……これを早く見れば良かったんだよな」
と言う貴弘に、のどかは、
「どうでしょうね。
そこまでの積み重ねがあったから、この写真を見て、このときも幸せそうだったな、と素直に思えたのかも」
と言う。
のどかは、その写真を見、貴弘が見せてくれたホタルブクロの光を見、かつてのあばら屋敷を見上げた。
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