100人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女を取り巻く環境というのは、彼女の申告を信じるならば、踊り場での寛子の介入で、目に見えて軽蔑的かつ剣呑なものに変貌したらしい。しかも、日に日に悪くなるという。
多少関係してしまったこともあり、寛子も胸が痛んだが、彼女の方がこれ以上かかわってくれるなと頼むので、それまで通り、生物実験室で、他愛のない放課後を過ごしていた。
そして十月も終わりかけた、ある日。
「せんぱい!!! 朝礼、びっくりしました! おめでとうございます!」
「えっえ、何のこと……ああー。受賞のこと?」
「他に何があるんですか。教えてくれたら良かったのに。校長先生の話が長くて寝かけてたら最後にせんぱいが呼ばれて、変な声出そうになった……」
「私が聞いたのも、つい何日か前だったんだよ。それから、あなた、顔出さなかったから」
寛子が夏休みに仕上げた研究レポートが、県の科学賞の特選を取ったのだ。
いろいろと助言をくれた顧問の理科教諭は、「この内容なら県トップは当たり前、勝負は全国」というスタンスだったので、彼女のように全力で祝福されるとびっくりする。
しかし、もちろん、悪い気はしないのだった。
「賞もらったの、どんな研究だったんですか?」
「一度も訊いたことなかったくせにゲンキンだね……」
最初のコメントを投稿しよう!