第一部 生物実験室の彼女

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「……和解、したの?」 「ええ、謝ってもらいましたよ、仲良くしなくてすみません、って……何なんですかね。変なことで謝らせる人。腹立つこと言われたり、当番押し付けられたりしたんで、そっちの謝罪だと思おうとしてますけど。あの子たちだって嫌いな人間とは仲良くしたくないだろうにな……ああ、」  彼女はため息と一緒に、大きく感嘆の声を出した。 「……悔しい。何にも知らなかった男子は、あいついじめられてかわいそうだったんだ、って思ってるんだろうな。私、何かができなくて目立つようなこと、小さい時から一度もなかったのに、この期に及んでこどもみたいに”協調性”とか。ハッ、悔しい。あいつら、絶対許さない」  彼女の目にはみるみるうちに水が盛り上がり、決壊する。声はあがらなかった。彼女は制服の袖で涙を払うと、止まらないそれに絶望したように、はぁっ、と肩を揺らす。 「学年三クラスしかないし、いつまでこの気まずいのが続くんだろう……とは思うけど、勉強しに学校来るんだし、変な誘惑がなくてちょうど良い。トモダチと青春しろ、なんて圧力に屈するもんか。超優秀になって、せんぱいみたいに、全校生徒の前で壇上に立てるくらい……って、ちょっと、せんぱい」
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