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――この子は、同じことを言われたら、誰にだって同じことを許すのだろうか。……もっと進展した行為でも?
寛子は、一佳の目の窪みに溜まった水分を指先で拾って、ぺろりと舐めてみた。目をつむったまま、彼女はまるで無警戒だ。
むらむらと、寛子にはいらだちめいた感情が湧いてくる。
――やばい、何だこれ。手酷くしたい。髪をぐしゃっと撫で上げて、怒らせたりしてみたい。くらいに、彼女が、「かわいい」。
こんな感情は迷惑だろう、と、寛子にはわかっている。ひどく、攻撃衝動に似た、関心。もっといろんな顔を見たい。この子が見せたくない、そういう表情まで。自分の手で。
「もっともっと、全部忘れるくらい、強いの、あげようか」
寛子の声に、一佳はぽんやりと、無防備な表情で見返してきた。
「……何ですか」
「さあ」
「……あなたさ。泣き顔見せることわかってて、私のところへ来たんじゃないの?」
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