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第二部 くびながりゅうのみやこへ
大学進学を機に縁遠くなっていた一佳と再会したのは、中学・高校と通った私立汀野大学附属中学・高校の同窓会だった。
それは居酒屋などで開かれる個人主催のクラス同窓会ではなく、十年に一度、県下の高級ホテルの宴会場などで行われる学校主催の大規模なものだ。
卒業年次でテーブルが割り振られ、立食パーティらしい。
顔も知らない派手なおじさんとおばさんがひしめいている上、寛子の学年はほとんど会話したこともない男子二人しか来ておらず、頼みの教師も入れ替わりがあったようで、随分と心もとない気分で、理事長挨拶の続く中、周囲に視線をさまよわせていた。そこで、彼女を見つけてしまったのだった。
――どうしよう。
動揺してしまった寛子をよそに、歓談の時間になると、一佳は迷いのない足取りでテーブルにやって来た。
「お久しぶりです。せんぱい」
ほっそりとした身体に、通勤着と見まがうような飾り気のないスーツ姿を纏わせ、生のままの黒髪を短く揃えた彼女は、学生時代と比べると随分と洗練されていたが、相変わらずのようでもあった。
人を寄せ付けず、馴れ合いを必要とせず、当たり前のようにひとりで立っている。
長年の積み重ねの成果か、今では、貫禄のようなものが備わっているようにも見えた。
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