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――誰が。なんのために。
などと聞いても、みんな、自分の知らない道を尋ねられたかのように困った顔で距離を取り、きっと教えてはくれないのだろう。
――あるいは、この子だけは、違うのかもしれないけれど。
「この切符は、なに?」
「今日はうちに泊まってください」
一佳の家の最寄り駅までの、切符、ということか。
カプセルホテルに行く、という言葉は、華麗にスルーされていたけれど、考えることにひどく疲れていた。
あまり良くない傾向、とはわかっている。
一人で立つ、ということに、こだわりも自負もあって、だから、ブレーキがかかる。
頼る、ことに。
「……せんぱい、台風が来た時帰れなくて、うちに避難したじゃないですか。あれと一緒だと思ってください」
「……あれは。迷惑かけたねえ。……子どもだったんだよ」
懐かしいことを思い出し、ふふっ、と笑ってしまう。
無敵な「せんぱい」は、一佳の家にずかずかとあがりこみ、お茶を出してもらって、ふんぞり返っていられた。
だけど、今はそれとは違う生き物なのだ。
「来てください。私の、お願いでも、だめですか」
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