第二部 くびながりゅうのみやこへ

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 ――誰が。なんのために。  などと聞いても、みんな、自分の知らない道を尋ねられたかのように困った顔で距離を取り、きっと教えてはくれないのだろう。  ――あるいは、この子だけは、違うのかもしれないけれど。 「この切符は、なに?」 「今日はうちに泊まってください」  一佳の家の最寄り駅までの、切符、ということか。  カプセルホテルに行く、という言葉は、華麗にスルーされていたけれど、考えることにひどく疲れていた。  あまり良くない傾向、とはわかっている。  一人で立つ、ということに、こだわりも自負もあって、だから、ブレーキがかかる。  頼る、ことに。 「……せんぱい、台風が来た時帰れなくて、うちに避難したじゃないですか。あれと一緒だと思ってください」 「……あれは。迷惑かけたねえ。……子どもだったんだよ」  懐かしいことを思い出し、ふふっ、と笑ってしまう。  無敵な「せんぱい」は、一佳の家にずかずかとあがりこみ、お茶を出してもらって、ふんぞり返っていられた。  だけど、今はそれとは違う生き物なのだ。 「来てください。私の、お願いでも、だめですか」
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