第二部 くびながりゅうのみやこへ

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「優しいね、一佳は。でも大丈夫だよ」 「優しさじゃないです。もう、この人は……」  めんどくさい、と聞こえた気がしたが、声になっていたかどうかはわからない。  一佳は唇を噛んでいた。  以前の彼女なら毒舌をもって、ひらひらと誘いを躱す寛子を責めたかもしれない。  でも、彼女もきっと、別の生き物になったのだ。  人間の幼生は愚かだから、疑う力が弱くて、信じる力が強くて――色々なことができた。  大人になった今では不可能となってしまったことも。――幸せになることも、簡単で。  でもやっぱり、とても、難しかった気もするけれど。  正しくなさに、折れてはあげられない。大人になってしまったら。だから。 「せんぱいは、私のこと、嫌いになって別れましたか?」 「……こんなところで……」 「今離したら、もう近付いてこない気でしょう。めんどくさい人。わかってる。だから離しません」 「…………」 「私はずっと好きでしたから」
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