第三部 そこは愛しきアクアリウム

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 そういうところも、やはり、恋に似ている。  親に庇護され、無力な時代には、違和感なく受け入れられる感情だ。なんなら、退屈な日常に添える、スパイシーな刺激にすらなるだろう。  だけど、大人として生きていくには、きゅん、はじゃまだ。はっきり言って。  申し訳ないけれど、現実を見なければ。食っていかなければならないので。  ――二次元の方言スタンプくらいなら、まあ、愛でられないこともないけれど……。  一佳からは、それほど間を置かずに 『部屋あたたかくして待ってます。買い出し追加はありません。』 と、返事があった。  彼女は、ほとんどスタンプを使わない。 『ありがとう』『了解です』というような定型句でさえ、いつも自分の言葉でコミュニケーションを取ろうとする。  不器用――というか、めんどくさくないのかな、とつい思ってしまうが、一佳らしいと思う。彼女は方言や郷土のものにも、寛子ほど関心を寄せない。  寛子は笑顔のスタンプを返してから、端末をコートのポケットにしまった。アプリに、実家からもメッセージが届いているのが見えているのには、気付かない振りで。
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