No.15  7月5日   第六感

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No.15  7月5日   第六感

 どれ、取引先に出向くか と思ったらスマホが鳴った。  以前、落としたスマホが車に轢かれてしまい、データが取り出せなくなってしまったので誰の番号もわからない。かけてきてくれた友達の番号を登録していく日々だった。  かかってきたのは未登録の番号だったが見覚えのある番号だったので、座り直して電話に出ると母方の叔母だった。  叔母は開口一番 「ねえ、元気なの?何かあった?」 と捲し立てる。  とりあえず 「元気じゃない。死にそうになった。」 と言った。叔母には嘘をつけない。嘘をついたところですぐバレてしまう。  私は今年の2月に本当に死にそうになった。  貧血になり普通の人の3分の1まで血量が下がってしまったのだ。普通は入院して輸血のところ、子供達を放って入院することもできず、医者の説得を振り切って入院を断り、毎日フラフラと病院に通って造血剤を入れてもらい鉄剤を飲んでプルーンやひじきを体内に大量にぶち込みながら絶対安静と死んでたまるかという思いで生き延びた。  私は根が丈夫なだけに青天の霹靂だった。  下手な憐れみも欲しくないので弟と父と前述の先輩以外には誰にも知らせずにいた。  200km以上離れた場所に住む叔母がそれを知っているはずもなく、私は当然 「何かあったってどうして知ってんの?」 と聞いたが、だいたいの検討はついた。 「さっちゃんが3日も連続で夢に出てきて、あんたに電話しろってあんまり言うから何かあったんだと思って電話してみたのよ。」  やっぱりな。  さっちゃんとは叔母の姉である私の母の呼び名だ。  母方の家系はそういう変な勘が働くというか、ちょっとおかしな方向のものが見えるというか……うまく説明できないが……  私もそういう血を引いているせいで、時折、おかしな感じになることがある。  そのせいで幼い頃は散々な目にあってきた。  そして、生前の母は私と意思の疎通ができないと早々に気づき、私が慕っている叔母を通して言いたい事を言ってきていた。そんな母を見て、ご苦労なこったと心の中でよく悪態をついたものだった。  今回も心配なら自分が化けて出ればいいものを。本当にご苦労なこった。  叔母と近況を報告しあったり母の話をしたりした後、 「さっちゃん、きっとあんたが心配なんだよ。ずっと見守ってくれているから。大丈夫なんだからね。」 と叔母が言うので 「亡くなってから弟とずっとお母さんの文句言ってるから、むしろ後ろから真綿で首絞められてるようだわ。」 と言ったら叔母は爆笑していた。  「心配してくれてありがとう。ちょっと元気出たよ。」 と言うと、叔母は可愛く笑って照れていた。  元気過ぎるほど元気ではあるが、高齢になった叔母のことも気にかけようとスマホのアドレス帳に消えてしまった叔母の電話番号を登録した。  
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