王女様とサムライ

2/36
前へ
/36ページ
次へ
<はじめに>  この恐るべき事実に僕は今頃になって気づいた。  この物語の舞台は、あのトランシルバニア・ジーベンビュルゲン公国は、僕たちの世界では”ルーマニア”の一部に比定されるわけで。  さらに、この時代・・イメージでは1970年代中期・・は、このバルカン半島は完全にソビエト連邦を宗主国とする共産圏なわけで。  そんな所の人間が、自由にアメリカ渡航などできるわけがない。  いや、それ以上に僕たちの世界では、共産主義は完全に”王政否定・打倒”なのだ。  つまり、  ”ルーナ王女”はどうしたって、存在し得ないのである。  この物語を書いた当時の平井先生、石ノ森先生が、”時代の常識”としてそのことをご存じないはずも無く。  あの世界は共産圏が存在しないということだったのか。  子供だった僕は、ハリウッドのドラキュラ映画のおかげで、この年になるまであのあたりもなんとなく自由主義圏だと、根拠無く思い込んでいたのだが。  さて、あらためて、舞台として描こうとして・・  こりゃ、困ったぞ、どうしよう、なのでありますが。  だからこそ、こんな物語に、なっていくのですよ、みなの衆。  改めてこの物語の舞台の背景を調べていたら・・  この数奇な恋の物語をどこから始めようか。筆者も、大いに悩むところなのである。  しかし、たぶん・・やはり、ここからだろう。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加