あたしとご主人とアイツのこと。

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あたしとご主人とアイツのこと。

 だけど、ある日。 オスが、家に帰らなくなったの。 ずっとずっと、もう何日も居座っている。 あたしの『お気に入り』の場所も、横取りされたまま。 其処にはいつも、あのオスが居て、ご主人は毎晩あたしをケージに閉じ込める。  寂しくて、腹が立って。 だけど、どうしたら良いのか解らない。 だってあたし、猫だから。  その日から、ご主人は、あたしよりオスを構うようになった。 あたしのご飯より、オスのご飯を先に作るし、 オスとばかり話しているし、あたしと遊んでくれなくなった。  二匹で一緒に出掛ける事も多い。 あたし、お留守番。 いつも置いてきぼり。  寂しいな。 寂しくて、悲しいな。 ご主人は、あたしのこと嫌いになっちゃったのかな? あたしがいつも、あのオスを引っ掻くから…意地悪ばかりするから。 だから嫌いになっちゃったのかな…  真っ暗な夜が来て、お腹も空いて来て…あたしは鳴いた。  ご主人は、まだ帰らない。 このままずっと帰って来ないかも知れない。 寂しいよぅって、大声で鳴いたの。  鳴いて、鳴いて…いっぱい鳴いて。 いつの間にか眠ってしまったみたい。 気が付いたら、あたし、ご主人のお布団の中に居て。隣には、あの大きなオスも居て。 あたし、二匹の間に挟まれるようにして眠っていた。  あったかいな。 幸せだなって…そう思ったの。 『おとうさん』と『おかあさん』って、あたし、良くわからない。 でもきっと、こんな感じなのかなって、そう思った。  …それから。 あたしとオスは、ちょっぴり仲良しになった。 あたし、コイツ嫌い。 でも、ご主人は大好きだから、ちょっとだけ我慢してあげる。  あたし、猫。 ご主人と、いつも一緒。
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