あたしとご主人とアイツのこと。

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

あたしとご主人とアイツのこと。

 だけど、ある日。 オスが、家に帰らなくなったの。 ずっとずっと、もう何日も居座っている。 あたしの『お気に入り』の場所も、横取りされたまま。 其処にはいつも、あのオスが居て、ご主人は毎晩あたしをケージに閉じ込める。  寂しくて、腹が立って。 だけど、どうしたら良いのか解らない。 だってあたし、猫だから。  その日から、ご主人は、あたしよりオスを構うようになった。 あたしのご飯より、オスのご飯を先に作るし、 オスとばかり話しているし、あたしと遊んでくれなくなった。  二匹で一緒に出掛ける事も多い。 あたし、お留守番。 いつも置いてきぼり。  寂しいな。 寂しくて、悲しいな。 ご主人は、あたしのこと嫌いになっちゃったのかな? あたしがいつも、あのオスを引っ掻くから…意地悪ばかりするから。 だから嫌いになっちゃったのかな…  真っ暗な夜が来て、お腹も空いて来て…あたしは鳴いた。  ご主人は、まだ帰らない。 このままずっと帰って来ないかも知れない。 寂しいよぅって、大声で鳴いたの。  鳴いて、鳴いて…いっぱい鳴いて。 いつの間にか眠ってしまったみたい。 気が付いたら、あたし、ご主人のお布団の中に居て。隣には、あの大きなオスも居て。 あたし、二匹の間に挟まれるようにして眠っていた。  あったかいな。 幸せだなって…そう思ったの。 『おとうさん』と『おかあさん』って、あたし、良くわからない。 でもきっと、こんな感じなのかなって、そう思った。  …それから。 あたしとオスは、ちょっぴり仲良しになった。 あたし、コイツ嫌い。 でも、ご主人は大好きだから、ちょっとだけ我慢してあげる。  あたし、猫。 ご主人と、いつも一緒。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!