PRETENDER

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「……ウルシオールは、ウルシ科の植物には多少なりとも含まれています。この辺りの山歩きでよく見る、秋に紅葉するハゼノキもそうですし、マンゴーもそうです」 「マンゴー?!」 「ええ。そして、一度かぶれると悪化しやすい。平取の服装は、かぶれを予防する為の見本です」  ご新規さん三人が、一斉に私を凝視する。  今日は、半袖を着た方が良いのか迷うような天気だというのに、しっかり着込んでいる。長袖のエプロンスモックの頭にバンダナを三角巾の様に巻き、眼鏡にマスク。襟元にもバンダナ、スモックの下も長袖長ズボンという重装備だ。 「ここまでやらなくとも構いませんが、長袖に手袋は、必ず身に着けてください……みなさんお持ちになりましたよね?」  三名様が真剣な顔で、一斉に頷く。 「先生は?そんなんで平気なの?」  四十代くらいの女性に聞かれる。  話を聞いて先生を見たら、質問したくなって当然だ。 「俺は特異体質なんですよ」  だって先生の服装は、胸元のよれっとした作務衣、裸足に雪駄、手袋無し。髪はぼさぼさ、もちろんマスクも眼鏡も無し……細かい作業の時に、拡大鏡は時々掛けるけど。 「気をつけてさえ居れば、よっぽど体質が合わない場合以外は、怖いもんじゃ有りません。くれぐれも良い子の皆さんは俺の真似はしないで、いつまでも美味しくマンゴーを食べて下さーい」  お決まりの冗談で小さく笑いが起こって、固かった場が、少しほぐれた。 「それでは、始めましょう。エプロンを着て、持ってきた修理品を出して見せて下さい。……平取、みなさんの手袋のサイズ見て、お渡しして」  先生が、言うか言わないかのタイミングで。 もう用意してあったサイズ別の手袋を持って、三名様の手を見せて貰いに机を回った。
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