可惜夜《あたらよ》のうた

【短編】花盛の夜

傘を差しましょう、

貴方の上で空を遮るわ。

雨など降っていないけれど、

傘を、貴方に。

ほら、

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桜(さくら) 牡丹(ぼたん)に 白菫(しらすみれ)
春霞(はるがすみ)似合う若い女に
色を教えた着流しの男

花香る夜に 女の前で
桜色を牡丹色に染め
牡丹色を白菫に染め
百花繚乱 散りゆく様を
黒檀の瞳に灼き付けた

濡羽色満ちる今宵の空は
全てを許す慈悲の色

其れ故傘を差しましょう、

韓紅(からくれない)の大きな傘を。

貴方に天を仰ぐ資格は無い────