【短編】月灯の夜

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愛しい人がいるのなら。 ほら、ご覧、 河原を埋める赤色を。 ほら、ご覧、 貴方の足元で囁くものを。 世にも綺麗な臥待の月は、 頭上で貴方を見下ろすばかりで──── ### 月照る川辺に立った男に 寄り添い咲くのは灯籠花 彼岸で女が手を振れど 小舟は既に水の上 男は臙脂(えんじ)の花の根を抜き 陶酔のままに嚥下(えんげ)した 女に逢いたい一心で 彼岸を待たずに夭折をして 満願叶う筈も無く 彼岸は彼から遠ざかる 川で溺れる男の足を 水底の闇が引き摺りこんで 満ち欠けるまでに一つ月 人の一生はそれ以上 いつでも下には花があり いつでも上には月がある a9825bd1-71c2-45f5-b6ae-8fa7bb8cfaf2
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