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**夏だから…頬ずりくらい、イイんじゃね?**
「ねぇ、雪夜? あと、どのくらいかかるの?」
「うーん、たぶん一時間くらい? 眠かったら寝てていいぞ。着く前に起こしてやる」
「ううん、起きてる。雪夜とお喋りしながら起きてる。だって、ずっと楽しみにして……ふあぁ……」
いやいや、『起きてる』言いながら、しっかりトロンっと半目でウトウトしてんぞ? 全く、可愛いな!
「……おっと」
小刻みな電車の揺れにカクンと頭を落とし、俺とは反対側に身体を倒しかけた智穂を慌てて支えた。
そのままちょっと力を入れて俺の肩にもたれるようにしてみれば、智穂のぷくぷくっとした柔らかな頬が間近に迫る。
うへっ、ドキドキする。この体勢、まるで恋人同士みたいじゃね?
でもいいよな? コレくらいなら、いいよな? 恋の神様も許してくれるよな?
それに、智穂の隣は武田だ。武田になんか、もたれさせるもんか……ん?
「なっ、何ぃっ?」
同じシートに一列に並んだ、同行者の幼なじみたち。
智穂の向こうに座ってる武田にチラリと視線を伸ばした俺は、信じられない光景に目を疑った。
武田も智穂と同じように居眠り中。いや、それはいい。いいんだ。
問題は、寝てる武田の頭に手をかけて自分にもたれかけさせてる土岐を見てしまったから。
それだけじゃない。その土岐のそのまた隣では、眠ってる高階に同じことをしてる一色の姿までが見えた。
マジか、お前ら! 何、ナチュラルにお熱い恋人みたいな真似かましてくれてんだよ。
智穂を支えてる手が緊張でプルプルしてる俺が情けねぇだろっ。
ま、負けねぇ。負けねぇぞ! 鼻息荒く、宣言だ。
土岐と武田、一色と高階。コイツらにだけは、負けらんねぇ!
俺のプライドをかけた勝負の旅が、今、始まる!(この宣言、二回目か?)
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