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雪の降る日に。
――サクッ
朝陽を浴びて、白く輝く銀世界。
――サクッ、サクッ
思った通り、誰も足を踏み入れてない純白の景色を見て、自然と笑みが浮かぶ。
「ふふっ。これなら、きっと……」
いいのが出来る!
確信し、左肩に掛けたクーラーボックスのショルダーストラップをきゅっと握りしめた。
「――おはよう、智穂」
――びくんっ
「……っ……あっ、ゆ、雪夜。おおっ、おはよっ」
すぐ後ろからかけられた幼なじみの声にびくんっと背筋が伸び、肩からずり落ちそうになったストラップを慌てて引き戻す。
嘘っ! なんで、雪夜がこんなとこにいるの?
今頃は、学校で朝練のはずじゃ……だから、この計画を実行してるのにっ。
「なぁ、智穂? お前、こんなとこで、何してんだ?」
「あ? べ、別に! 何でもいいじゃんっ」
どうしよう? どうしたら、いい?
ここに現れるはずのない相手――――綺麗な黒髪と端整な容貌を持つ幼なじみの姿を前にし、困惑と緊張、それから混乱と動揺の極地に達してしまった。
いったい……いったい、どうしたら……!
「――おーい、常陸ぃ! おいっすー!
今日は、さーみぃなぁ。朝練中止になって、マジでラッキーだったよなっ」
「あぁ。はよ、武田」
「おう! ん? あれ? そこに居るのは、兼子か? ふたり合わせて、おいっすー!」
「あ……武田くん、おはよう」
学校の敷地の隣に位置する、城址公園の入口。
雪夜に挨拶した後。その背後から、こっちに向かってブンブンと手を振ってきてる元気な声の主に、挨拶を返した。雪夜への内心の動揺を隠しながら。
真冬とはとても思えない、春の陽光のような笑顔を見せる男の子は、雪夜と同じバスケ部の武田慎吾くんだ。
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