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「どうぞ。」
短い言葉で話し掛けて、僕は傘を差し出した。すると彼女は、弾かれた様にピクリと肩を跳ね上げて、此方を振り返る。
「良かったら使って下さい。」
遠慮がちに切り出せば、彼女は、ぎこちない笑みを返して云った。
「あの…有難うございます。でも、大丈夫ですから。」
…断られた。
余計なお世話だっただろうか?
だけど、気になって仕方がない。何故なら──
「ワンピース…」
「はい?」
「裾に泥が跳ねちゃってますよ。綺麗な服なのに──勿体無い。」
「え…えぇ!」
彼女は、大声を上げて僕の指差す方を見た。ふわふわのドレスの裾に、黒い泥はねの跡がある。
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