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【承】feel sad
僕は、とある市民交響楽団のトゥッティ(一般団員)で、オーボエ奏者である。
幼い頃からの夢を叶えて、毎日、音楽漬けの日々を送っているが…音楽だけでは生活が成り立たないので、普段は、楽器店の店員として働いていた。
オーケストラが好きで、オーボエが好きで──どうしても、その道に進みたくて進学した都内の音大。
…親には、無理をさせたと思う。
それでも、夢を諦める事は出来なかった。
努力はいつか報われる筈だと、一途に思い続けていたのだ。
しかし、立ちはだかる現実は厳しくて…
僕が望む未来へと続く道は、結局、見付けられなかった。
名のあるオーケストラには、空きが無い限り入れない。ごく偶にチャンスがあったとしても、オーディションで結果が出せず、悉く好機を逃してしまう。
──音大卒業後。
僕は、ピアノ教室の事務員として働く事になった。後に残ったのは、奨学金の返済と苦い後悔だけ。…人生初にして最大の挫折である。
そうして、僕は少しだけ物分りの良い大人になった。
夢を持って生きる事は大切だし、譲れないものを持つ自由もある──だが。夢だけでは食べていけない現実を、その頃の僕はもう知っていた。
それでも音楽だけは続けたくて、地元に戻り、自治体主催の小さな交響楽団に入った。偶、オーボエに空きがあり、オーディションも難無くパスした。
僕が予定していた未来は、やや遅ればせながら、矮小化した形で実現したのである。
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