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#01 君とすれ違う
壁に掛かっている時計の針が5目盛り動くまでの間に僕は3回携帯を覗いた。(どっちを見ても同じだろ)なんて心の中で自分に突っ込みながら。そしてまだあと7分もある。
楽しくて面白い時間はあっという間に過ぎるのに、望んでいない時間はまるで誰かの嫌がらせかと思うほど長い。だから時間の流れる速さっていうのは絶対に一定なはずがない。そんな感じにイライラしているから、黒板に次々に書かれていく世界史の内容も、先生がまるで自分の目で見てきたかのように得意気に喋っている15世紀ヨーロッパのどこかの国のエピソードも、そんなものは一切頭の中に入って来ない。
(先生ゴメンねダメ生徒で)と僕はまた心の中で呟く。
今僕は、ただひたすらにこの授業が一秒でも早く終わることを願ってる。だってここは僕の場所じゃないし、これは僕の時間じゃないんだから。
まさかこれ永遠に続くんじゃないのと言いたくなるそんな時間をどうにかやり過ごし、ようやく終了のチャイムが鳴ったこの嬉しさはちょっと言葉に出来ない。掃除はパス、当然ホームルームもパス。ケイジに目と眉毛の動きでバイバイと伝え鞄を手に急いで教室を出ると、今度は廊下で3組のシゲに呼び止められた。
「あっマヒロ、ちょっと」
ヨシザワシゲユキ。中学の時からの友達で野球部所属。1年だし、僕から見ても素質あるような感じはしないので勿論まだレギュラーではない。そして軽い、性格が。だけどそれなりに体育会系の性格でもあり、まぁ気の良い奴だ。
「うちのクラスの女が呼んでんだけど」
「あー悪い。急いでるからまた今度」
行こうとする僕の肩をシゲが掴んで引き止めた。
「……可愛いぞ」
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