黄色い傘を翻す

12/12
前へ
/18ページ
次へ
 軽い挨拶を終えた後、ご友人がお嬢様に話しかけた。 「今日もその傘なのね」 「もちろんよ」  胸を張って傘を翻すお嬢様は美しい蝶のように魅力的だ。どんな所作も華麗である。 「この傘をきっかけに交わした約束があるの」  うっとりとした目でお嬢様は傘を傾かせる。  一方で、ご友人はチラリと私に目配せした。苦笑いを浮かべるご友人の言いたいことはわかる。  またこの話が始まる、だ。  その顔に気付いているのかいないのか。お嬢様は、脚色豊かにその傘に関する思い出を語るのだった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加