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七歳をむかえる私の誕生会という名目で開かれたパーティに、学校の友達は参加しない。招待状が届いていないからだ。代わりに知らない大人たちが、笑っていない目元を父や母に見せ、口先だけの賛辞を述べている。あの空間の中では、確かに私はひとりぼっちだった。
だから逃げ出したのだ。
言葉に詰まる私に対し少年は、はにかむ。
「……僕と一緒だったら、寂しくない?」
「寂しくない……」
口からこぼれ落ちた言葉は、直感で思ったことそのものであった。同時に、脆く崩れそうだった何かが内側から満たされる。脆弱性を秘めた胸の奥に生まれた熱の塊が、負の感情をまとめて吸い込んでしまう。
当時は何故、急に活力がみなぎったのかはわからなかった。ただ、後々に思い返して気がついた。
私自身を心配してくれた少年に、
私に向けた笑顔に、
恋をしたのだ、と。
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