黄色い傘を翻す

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 この晴天の中、太陽が地球へ送る光の九割を吸収したと錯覚するほど真っ黒な髪は、肩の下まで伸びており、緩いウェーブをえがく。ピアノの黒鍵のように輝く天使の輪を輝かせる主人は憂を帯びた短いため息を吐いた。柔らかく細い影のような睫毛が僅かに揺れる。髪とは対照的に、透き通る真っ白な肌は雪を彷彿とさせ、この猛暑の中で唯一、清涼感という言葉が似合う。  優雅な動作で主人は下車する。制服のスカートがふわりと揺れた。白を主とした学校指定のワンピースの制服をひと目見た者たちが想起する言葉はただ一つ。清楚だ。襟元と腰のベルトは黒く、コントラストの色合いが対照的だ。金色の胸元のボタンには星を元にした校章が眩しい。  
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