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第1話 シトラスな秘薬
今日は、先輩社員の結婚披露パーティーだ。ジミ婚やスマ婚が流行る今時にしては珍しく、横浜にある高級なホテルで盛大に行われていた。
私は自分の着ているブラックのミニ丈ワンピースの短い裾を下に少しだけ引っ張ってみた。
普段、着慣れないフォーマルなワンピースは、なんだかやけに気恥ずかしい感じがする。
「のびる訳ないか……」
化粧室を出て、高級そうな絨毯が敷き詰められた廊下をぎこちなく歩いてロビーへと戻っていく。
履きなれない高いヒールの靴は、かかとが靴擦れして既にかなり痛い状態だった。
ふと、足元を見てから顔を上げた視線の先に、会社の先輩社員の眞鍋さんが喫煙所で一人、窓の外を見ながらタバコをふかしているのが見えた。
(眞鍋さんってこうしてみると……やっぱりイケメン)
私の存在に気が付いた様子の眞鍋さんと目が合った。
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