飛んでみた

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 …――傘をさして傘をパラシュート代わりに空を舞う。  なんて夢物語だよね?  すわメルヘンだよね?  でも夢を大事にしたい僕は、お小遣いを一年と三ヶ月分ためて、ある傘を買った。  アンブレイカブルという柄の部分に人間が乗っても折れないという高級な傘をだ。  メルヘンな夢の割にお金がかかるという、ある意味、逆説的な道を突き進み僕は僕の夢を達成すべく崖の前へと立った。崖から眼下をのぞく。遥か下には大海原が拡がっていて白い波が壁面へと打ち付けている。誰かが言った。この崖は……、  自殺の名所として有名な場所で崖から飛び込めば、あの世へと連れて行かれると。  もしかすればだが、異世界へと転生する可能性もある。  でも、それもまたメルヘンじゃないか?  僕は一つ息をのんでから眉尻を強く上げて意を決する。  大丈夫。安心しろ。夢はきっと叶うと。  そうして、  どうしても肛門括約筋が緩んでしまって屁が漏れるという事態になってしまった。  メルヘンは芥もない。  むしろ在るのはヘルに行った変なやつ。 「そうか。貴様の夢は叶ったのだな。だから余の目の前に居るというわけだ。して、その夢の大きなウェートを占める傘とやらが貴様の武器か。フハハ。面白い」  ……いやいやいや、全然面白くない。面白くないっス。  むしろこの場からすぐに消えたいッス。 「よかろう。余も全力を持って貴様を倒してやろう。そうだな。殺す前に貴様の名前を聞いておいてやろう。異世界からの勇者よ、名を名乗る機会をやろう」  美少女ッ。  いや、僕の名前じゃない。美少女なんて名前の男だったら死にたくなってしまう。  こいつが美少女なのが余計に嫌なのだ。  僕は崖から飛び降りて死んでしまったのだろう。そしてラノベお約束の異世界転生を果たす。ただ転生先が魔王の目の前だったのだ。つまり要約すると僕は崖から飛び降り死んでしまい異世界の魔王と対峙するハメになってしまったというわけだ。  てか、魔王は美少女。  超が付くほど美少女。
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