飛んでみた

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 むしろ美少女こそ魔王とも言えるほどに美少女という表現が的確なのだ。だからこそ別の出会い方をしたかった。いやいや、たとえ美少女(まおう)と同級生だったとしても平凡な僕が相手にされる確率は砂漠に雨が降るほど、あり得ないとも言える。  むしろ百枚宝くじを買って百枚とも一等が当たる確率?  が、それでも全ての宝くじの一等を当てるが如く、平和な同級生が良かったと思うのは健全な男子であれば当然の欲求と言える。それが何の因果か、僕は異世界からの勇者であり、美少女は勇者の仇敵である魔王というシチュエーションとなった。  しかもだね。しかも、  許された武器は、アンブレイカブル傘という体たらく。  確かに15000円もした超高級な傘だけども武器としてはどうかと思うぞ、普通に。目の前の美少女が許せば相合い傘でもして役立てたいくらいだ。てか、傘を武器に魔王の目の前に立つという行為自体、魔王に対して失礼と失敬ではないだろうか? 「はよう名乗らんか、異世界の勇者よ?」  もうこうなったらさ。  鼻歌でも歌ってスキップしながら傘の上で鞠を二個回して『いつもより余計に回しておりますぅ』なんて言いながら誤魔化して逃げるしかない。それが傘の有効利用ってもんだろう。でも、おひねりが飛んできても決して目移りしちゃダメだ。  逃げちゃダメなんだ。  逃げちゃダメなんだ。  逃げちゃダメなんだ。  あっ……。  いや、逃げるんだった。一目散に背後にある大きな扉から脱出するしかあるまい。 「そうか。余程度に名乗る名前はないと、そう言いたいわけか。よかろう。では名は聞かん。それよりも宴を始めようか。余と貴様の熾烈なる戦いを始めようぞ」  違うぅぅぅぅぅッ!?  誤解しないでプリーズゥ。僕は単なる夢見がちな茶坊主でしかなく、異世界から来た勇者なんかじゃないの。例えば、お餅が目の前に在って美少女から焼けと言われたらヤキモチ焼く位しか脳がないパープリンなの。餅も満足に焼けない阿呆なの。  今、力強く言いたい。  メルヘン・プリーズ。  とだ。  美少女とヤキモチを焼き合うメルヘン・プリーズゥッ!
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!