夏の始まり

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あれから電話で話すことはなく、金曜日を迎えた。 あれから、5日経ったんだ、、、。 別れ際に「電話する」と言っていた先生は、言った通り電話をくれていたけれど、私は逃げてしまっていた。 気づけば、メールだけの日々となりつつあって。 一応、毎日、連絡を取ってはいるけれど。 全てメールだ。 今から寝ますとか、今仕事終わったとか、バイトが終わったとか、そんな素っ気ない、作業確認のようなメールをお互いに送り合う日々。 先生との距離が広がっていくのはわかっていた。 だけど、私にはどうすることもできずにいる。 「えー!響、彼氏とまだ喧嘩中なの??」 いつもの4人で学食でランチをしていると、話題は私と先生の話になり、さくらちゃんが目を丸くして言う。 あの一件は、ちいちゃんにだけに伝えていたんだけど。 話の流れで、さくらちゃんたちにも伝わってしまい、みんな状況を知って心配してくれていた。 喧嘩かぁ。 喧嘩ではないんだけれど、、、。 あれ以来会っていないことを、さくらちゃん達に告げると、みんなびっくりしている。 「それ、やばいやつじゃん!」 美香ちゃんが言う。 やばい、のかなぁ。 確かに、どうしようとは思っているけど。 どうしたらいいのかがわからない。 「響の彼、何考えてるのかわかんないね。」 さくらちゃんが言う。 そうなんだ。 だから私も動けずにいて。 「響ぃ、大丈夫??」 ちいちゃんには心配そうな顔をしている。 「とりあえずメールはしてるよ、毎日。業務連絡的な。」 ただ、お互いの所在確認をしているような内容のメールだけれど。 「業務連絡って!なにそれ!!」 さくらちゃんが驚いている。 確かに、おかしいよね。 あれから明らかに私と先生は変なんだ。 「バイトもあるし、向こうも仕事だし。電話も来てたけど、なんか出づらくて。」 何を話したらいいのか、わからなくて、気づけば5日も経っていて、気まずい雰囲気のまま今日になってしまった。 先生もきっと感じていると思う。 ぎこちない、不自然な私たちの今の関係。 「もうっ!ほんと伊藤何考えてんの?」 ちいちゃんが怒った口調で言うけれど。 「んー。わかんない。」 苦笑いしか出来ない私。 本当にわからないんだ。 「響、勇気出したのに!それを拒否るって、何?。響の気持ち全然わかってないじゃん!。響、大丈夫??」 さくらちゃんが心配してくれている。 「私は大丈夫だよ!」 みんなにこれ以上心配をかけまいと、元気そうに振る舞う私。 だけど、本当は、あの一件を思い出すと胸が痛んで、苦しくなる。 そして、これからの2人の事を考えると不安に押しつぶされそうになっていた。 深まった溝はどんどん広がっている気がして。 「今の状況やばくない??。このまま別れたりするかもよ??」 さくらちゃんの一言が、胸を突き刺す。 別れる? 別れてしまうの? もし、そうなったら、、、。 そんな事、考えたくもない。 別れるなんて選択肢は私の中には絶対無いけれど、でも、もし先生が、私の事を好きじゃないとしたら? それが先生の答えなのだとしたら? さくらちゃんの一言で、不安な気持ちがどんどん膨らんでいく。 会いたい。 だけど、会うのが怖い。 前のように先生と、話せない気がして。 気まずい雰囲気になるのが嫌で、逃げている自分がいる。 このままじゃダメだよなぁ。 わかってはいるんだけど。 「今日会いなよ!!早いうちに会わないと、やばいって!!」 美香ちゃんが言う。 「今日はバイトあるんだ。その後先輩達が、歓迎会してくれるって言ってくれてて。今日は無理かな」 そう答えた。 以前に、バイト先の香さんから誘われていた、歓迎会が、急遽今日になったんだ。 その事も、先生には昨日メールで伝えたけれど、先生からは「楽しんで来いよ」という返信だけで。 その文面を見て切なくなったりもして。 ダメにはなりたくない。 だけど、先生の顔を見るのが怖い。 また拒否されたら?? そう思うと、怖くて、どうしていいかわからなくなる。 でも、考えるのは、いつも先生のことなんだ。 何してるのかな、ご飯食べたかな、なんて、先生のことばかり考えてしまう自分がいる。 今までは、バイトの無い日は、時間を見つけて会っていたから、5日間も会わないなんて、初 めての事。 声も聞いていない。 どうなっちゃうんだろう、私たち、、。 はぁ、、、深いため息がこぼれた。 学校が終わり、そのままバイト先へと向かう。 ちいちゃんも、これからバイトで、同じ方角だから、一緒に帰る。 「響ぃ、思ってること、伊藤に伝えた方がいいよ。」 ちいちゃんが言う。 「うん。」 「響は我慢しすぎだよ。」 「そうかな。」 「付き合ってるって事はさぁ、同じ立場だと思うんだよ!!。年が離れてても、生徒と元教師っていう関係でもさぁ。卒業して3か月も経つんだし、普通に付き合ってるのに、伊藤の態度はおかしいよ!伊藤に理由聞いた方がいーよ!」 ちいちゃんが、いつも以上に熱くなって話をする。 自分の事のように考えて、一緒に悩んでくれているんだ。 「ちいちゃん、ありがとう。」 「伊藤はたぶん、何か考えてる気がするんだよね。大人だからわかんないけど。」 「そうだね。」 「でも、響の事はすごく大事にしてると思う!!響は愛されてるよ!それだけは絶対わかるんだから!!」 「うん。ちゃんと会って話してみるよ。」 ちいちゃんの気持ちに応えたいと思う。 「ほんと??」 ちいちゃんがパッと笑顔になる。 うんと頷く私。 このままダメになりたくない。 絶対に、それだけは嫌だから。 今まで先生から沢山の愛情をもらった。 この3カ月を振り返ってみれば、信じられるものは沢山あるから。 まだ、頑張れる気がする。 頑張りたい。 先生の事か好きな気持ちは何一つ変わっていないから。 「明日電話してみるよ。」 そう、ちいちゃんに告げた。
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